茅ヶ崎・寒川地域 早期膵がん診断プロジェクト

更新日  令和7年4月21日

膵臓がん早期診断プロジェクトについて

膵臓がんは発見や診断が難しく、生存率が低い予後不良ながんとなっていますが、大きさが10mm未満(または20mm未満)、病期が早い段階で診断すれば生命予後の改善が期待されます。しかしながら、この様な早期に診断される膵臓がんの割合は全体の5%に過ぎず、2009年~2011年における5年相対生存率は8.5%と極めて低いことも周知のとおりです。

そこで、茅ヶ崎市立病院では膵臓がんを早期に発見し治療につなげ、予後改善ができるよう「茅ヶ崎・寒川地域 早期膵がん診断プロジェクト」を開始いたします。
このプロジェクトでは、地域の先生方と連携し、膵臓がんを疑う下記のような「膵臓がんリスク」が発見された場合、すぐに精密検査を行い、適切な診断を行うことを目的としています。

そのため、地域の先生方には膵臓がんリスクのある患者さんがいらっしゃいましたら、一度当院へご紹介ください。

膵臓がん早期診断プロジェクトのモデル

健診・検診で異常を認めた場合(別途紹介基準を参照)には、プロジェクト用の紹介状で当院にご紹介いただければと思います。まずは膵臓のスクリーニング検査として、腹部超音波検査(AUS)、MRI/MRCP、超音波内視鏡(EUS)を行い、膵臓に膵がん、あるいはその他の病気がないかを評価します。診断を行ったうえで、膵がんのリスク判定を行いリスクがある方は定期的な検査をご案内させていただきます。

プロジェクトモデル

本プロジェクトにより、より簡易的に膵臓の精査を行える環境を整えられればと思います。
膵臓がんを早期に発見することが目標ではありますが、膵臓に不安を抱えており精密検査にご興味がある方々のお力になれれば幸いです。

ご紹介いただく紹介基準

紹介基準
〈症状) 1点 腹痛または背部痛・食欲不振・体重減少・黄疸
〈疾病) 1点 慢性膵炎・新規発症の糖尿病・糖尿病の増悪
〈検査異常〉 1点

腫瘍マーカー異常(CA19-9等)

膵酵素異常(アミラーゼ、リパーゼ等)

〈画像異常〉 2点 膵管拡張・膵嚢胞・膵実質の萎縮
〈家族歴〉 2点 両親または子供 1点 その他の血縁者

合計2点以上をご紹介いただく。

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膵臓がんとは

膵臓がんは近年増加傾向にあり、この30年間で約3倍に増加しています。発見や診断が難しく、全てのがんの中でも生存率の低い難治性のがんとして知られ、がんによる死亡数の順位も2023年の統計では3位となっていますが、早期に診断できれば、比較的治療成績が良いと言われています。
症状としては、腰背部痛や黄疸、腹痛、食欲不振、体重減少などが起こります。その他にも、急激な糖尿病の発症または悪化が認められる場合もあります。しかしながら、症状が出現するころには既に進行していることが多いのが現状です。

1位 2位 3位 4位 5位
肺がん 大腸がん 膵臓がん 胃がん

肝臓がん

(注)がん死亡数(2023年)(最新がん統計 がん情報サービスより)

膵臓がんのリスク因子
家族歴、糖尿病、肥満、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、飲酒歴、喫煙歴

膵臓がん患者における症状
腹痛、早期膨満感、黄疸、体重減少、背部痛

膵臓がん患者における血液検査異常
アミラーゼ・エラスターゼ・CA19-9・DUPAN2・SPAN1の上昇

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膵臓がんの診断と治療

発見の契機となる所見

1.血液検査 膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)の上昇、胆道系酵素の上昇
腫瘍マーカー(CA19-9、CEAなど)の上昇
2.腹部超音波検査 低エコー腫瘤、膵管拡張、膵嚢胞など

3.腹部造影CT検査

(単純CTでは検出困難)

低吸収の腫瘤、膵管の拡張など
4.その他 MRCPなどで膵管・胆管の狭窄あり

上記の検査で膵臓がんを疑う所見を認めた場合、超音波内視鏡検査(EUS)により詳細な観察を行います。
膵に腫瘤を認めた場合、超音波内視鏡穿刺術(EUS-FNA)、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)などにより診断確定を行います。
 

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EUS(超音波内視鏡)

茅ヶ崎市立病院では超音波内視鏡検査(EUS)を使用し、膵がんや胆管がんの早期発見に力を入れております。当院におけるEUSは増加傾向であり、茅ヶ崎市・寒川町においてNo.1の検査数を誇っており、患者さんに安心して検査・治療を受けて頂ける環境を整えております。またEUSを使用した細胞採取(EUS-FNA)はもちろん、さらに近年高度医療施設で普及しているEUSを使用した胆道ドレナージ(EUS-BD)などの超音波内視鏡下治療(Interventional EUS)にも対応しており、胆膵疾患におけるあらゆる内視鏡治療を提供しております。

EUS(超音波内視鏡)とは

EUS
当院で使用しているコンベックス型超音波内視鏡

EUS(超音波内視鏡)は、内視鏡の先端に超音波が付いた特殊な内視鏡です。CTやMRI、腹部超音波検査では見つけにくい小さな病変を見つけることに優れている検査です。膵臓や胆管の病気が疑われる場合に、胃カメラと同じように口からカメラを入れて詳しく調べることができます。さらに内視鏡の先端から針を出し、体の奥深くの膵臓等の細胞を採取し腫瘍の確定診断をつけることもできます(EUS-FNA:超音波内視鏡下穿刺吸引法)。

当院の観察EUSの検査の流れ

  • EUS は外来で行うことができる低侵襲な検査(身体の負担が少ない検査)です。
  • 当院では苦痛のない検査となるように努めています。
  • 患者さんの負担を軽減するために全例鎮静薬(眠くなる薬)を使用し検査を行います。 意識はほとんどなく、また痛みもほとんど感じません。
  • 検査時間はおおよそ15分程度です。検査終了後は別室で1時間程度休んで頂いた後、 ご帰宅となります。

EUS-FNAの実際

膵臓に腫瘤を認めた場合は、専用の針を用いた生体検査(EUS-FNA:超音波内視鏡下穿刺吸引法)を行うことができます。検査は数日間の入院が必要になります。

eusfns

左側のEUSの写真では膵臓に10mm大の黒い腫瘍(青丸で囲まれている部位)を認めています。膵臓がんが疑わしく、超音波内視鏡の先端から針を出し細胞を採取したところ、がん細胞を認め、膵臓がんの診断となりました。このようにEUSは、CTやMRIでは見つけにくい小さな膵臓がんを発見することができ、早期診断・早期治療につなげております。

EUSと膵臓がん

当院では、膵臓がんのリスク因子、症状・血液検査異常のある患者さんの超音波内視鏡検査(EUS)を積極的に行い、膵臓がんの早期発見に努めています。EUS を受けることができる病院は限られており、膵臓に異常を指摘された方や膵臓がんのリスクをもっている方のお役に立てると考えております。 お困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

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ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)は、口から内視鏡を入れ、胆管・膵管にカテーテル(細い管)を通して造影剤を注入し詳しく調べる検査です。検査の際は数日間の入院が必要となります。膵臓がんに対するERCPでは、膵管の造影を行い膵液などの検体を採取する精密目的と、膵臓がんによる閉塞性黄疸になった場合のステントによるドレナージ治療目的があります。ERCPの概要につきましては以下のリンク先をお読みください。

精密検査のERCPについて

早期の膵臓がんはがんができた場所の膵管が狭窄する所見や、膵実質(膵臓そのもの)が萎縮する所見が知られております。このような所見のすべてで、がんが原因という訳ではありませんが、それを証明するには直接細胞を採取する必要があります。そこで有用な検査がERCPになります。

内視鏡を十二指腸まで進めて、膵管と胆管の共通の入り口である主乳頭を確認します。主乳頭から主膵管にガイドワイヤーとカテーテルを挿入し、膵管の造影を行います。
 

ERCP

膵管の狭窄部分等を直接確認し、膵液の採取を行います。検査時一回だけの膵液採取では不十分なことが多いため、膵管から鼻までつながる長いチューブを留置し、そのチューブから複数回の膵液を採取します。5-6回の膵液を提出した後、チューブは抜去いたします。

ERCP

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