消化器疾患に対する治療・検査
更新日 令和6年12月11日
ESD(粘膜下層剥離術)
早期がんとは
通常、がんは粘膜層に発生し、進行に伴いより深くへ浸潤していきます。下図は胃がんの進行を図式化したものです。胃がんや大腸がんの場合、がんが粘膜下層にとどまっているものを早期がん、粘膜下層を超え筋層に浸潤したものを進行がんと呼びます。食道がんの場合は、粘膜筋板までに留まっているものを早期がんと呼びます。これらの早期がんのうち、粘膜にとどまっているものはリンパ節転移の可能性がほとんどないとされており、内視鏡を用いた病巣部のみの切除で根治が期待できます。進行がんの場合はリンパ節転移の可能性があるため、開腹手術・腹腔鏡手術などの外科手術が適応となります。
内視鏡治療
内視鏡治療は外科手術と比較し入院日数も短く身体への負担も軽いため、近年注目されている治療です。内視鏡的粘膜切除術(EMR)やポリペクトミーは大きさの制限がありますが、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)はがん・ポリープなどの病変の大きさに関わらず切除が可能です。また、ESDの特徴として病変をひとかたまりで切除できることが挙げられます。早期がんでも粘膜より深い層に浸潤している場合や、まわりの血管やリンパ管にがんが及んでいる可能性があり、正確な顕微鏡による診断(=病理診断) を行うために、病変をひとかたまりで切除することが必要になります。また、複数回に分けて切除すると再発の可能性が上がるという報告もあるため、ESDは多くの早期がんに適した治療と言えます。現在、当院では食道・胃・大腸に対するESDを積極的に施行しております。
ESDの手順
ESDは特殊な場合を除き、内視鏡室で施行します。ESD中は鎮静剤(眠くなる薬)・鎮痛剤(苦痛を和らげるお薬)を点滴から投与し、患者さんが辛さを感じない治療を心がけています。実際の手順は下図の通りです。
当院での胃がんに対するESD
患者さんへ
当院では患者さんに優しい内視鏡治療を目指しております。患者さんに不安・疑問の残らないように内視鏡治療前には分かりやすく説明を行い、鎮静剤・鎮痛剤を用いて苦痛のない内視鏡治療を心がけております。内視鏡治療後は看護師・栄養士など他職種とも連携し、安心して入院生活を送れるように患者さんと寄り添う医療を実践しております。
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)について
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)は、口から内視鏡を入れ、胆管・膵管にカテーテル (細い管)を通して造影剤を注入し詳しく調べる検査です。ERCPでは胆管・膵管の細胞を 採取することができます。CTやMRI、超音波内視鏡(EUS)で腫瘍(がん)が疑われる場合、ERCPで細胞を採取し最終的な診断をつける重要な検査になります。さらにERCPでは腫瘍等によって閉塞性黄疸になった場合のステント治療によるドレナージ、総胆管結石を除去する治療内視鏡でも力を発揮します。
検査のながれ
ERCPは全例入院で行います。検査当日は禁食とし、検査前に喉に局所麻酔をします。その後うつぶせとなり、患者さんの苦痛がないようにするために、点滴から鎮静薬(眠くなる薬)を入れ眠っていただきます。その後、口から内視鏡を入れ検査・治療を行います。検査・ 治療時間はおよそ30分から1時間程度となります。
まず口から内視鏡を入れ、食道・胃を通過して、十二指腸にある主乳頭へ到達します。主 乳頭は胆管・膵管の入り口となっており、この主乳頭から胆管・膵管に器具を入れて検査を行っていきます。
主乳頭に太さ数ミリの特殊なワイヤーとカテーテルをいれます。カテーテルの先端から胆管もしくは膵管に造影剤を注入します。右の写真は胆管に造影剤を入れた写真です。白く写っているのが胆管になりますが、膵がんにより3cm程度胆管が狭窄(狭くなること)しています。この患者さんは、膵がんによる胆管狭窄が出現し、腹痛・黄疸を呈していました。
乳頭を電気メスで切開した後に、狭窄を解除するために胆管内に金属ステントを留置しました。治療時間は20分でした。ERCP後は、翌日に採血を行い、合併症がないことを確認し食事開始となります。
当院におけるERCP
当院では膵臓・胆管・胆嚢疾患に対して内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)により、膵がん・胆管がんの診断および胆管炎・閉塞性黄疸や総胆管結石に対する低侵襲な治療(身体の負担が少ない治療)に力を入れております。 当院における ERCPは年間300~400件ほどでありますが(右表参照)、大病院と同様の設備で専門医による診療を患者さんに安心して受けていただく体制を整えております。 近年、高度医療施設で普及しているERCP困難例に対するEUS(超音波内視鏡)を用いた胆道ドレナージ(EUS-BD)や術後再建腸管に対する小腸鏡を用いたERCP、経口胆道鏡・膵管鏡など、胆膵疾患における高度な内視鏡治療も提供しております。 お困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。
EUS(超音波内視鏡)
茅ヶ崎市立病院では超音波内視鏡検査(EUS)を使用し、膵がんや胆管がんの早期発見に力を入れております。当院におけるEUSは増加傾向であり、茅ヶ崎市においてNo.1の検査数を誇っており、患者さんに安心して検査・治療を受けて頂ける環境を整えております。またEUSを使用した細胞採取(EUS-FNA)はもちろん、さらに近年高度医療施設で普及しているEUSを使用した胆道ドレナージ(EUS-BD)などの超音波内視鏡下治療(Interventional EUS)にも対応しており、胆膵疾患におけるあらゆる内視鏡治療を提供しております。
EUS(超音波内視鏡)とは
EUS(超音波内視鏡)は、内視鏡の先端に超音波が付いた特殊な内視鏡です。CTやMRI、腹部超音波検査では見つけにくい小さな病変を見つけることに優れている検査です。膵臓や胆管の病気が疑われる場合に、胃カメラと同じように口からカメラを入れて詳しく調べることができます。さらに内視鏡の先端から針を出し、体の奥深くの膵臓等の細胞を採取し腫瘍の確定診断をつけることもできます(EUS-FNA:超音波内視鏡下穿刺吸引法)。
当院の EUS の検査の流れ
- EUS は外来で行うことができる低侵襲な検査(身体の負担が少ない検査)です。
- 当院では苦痛のない検査となるように努めています。
- 患者さんの負担を軽減するために全例鎮静薬(眠くなる薬)を使用し検査を行います。 意識はほとんどなく、また痛みもほとんど感じません。
- 検査時間はおおよそ15分程度です。検査終了後は別室で1時間程度休んで頂いた後、 ご帰宅となります。
EUS-FNA の実際
左側のEUSの写真では膵臓に10mm大の黒い腫瘍(青丸で囲まれている部位)を認めています。膵臓がんが疑わしく、超音波内視鏡の先端から針を出し細胞を採取したところ、がん細胞を認め、膵臓がんの診断となりました。このようにEUSは、CTやMRIでは見つけにくい小さな膵臓がんを発見することができ、早期診断・早期治療につなげております。
EUSと膵臓がん
膵臓がんのリスク因子
家族歴、糖尿病、肥満、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、飲酒歴、喫煙歴
膵臓がん患者における症状
腹痛、早期膨満感、黄疸、体重減少、背部痛
膵臓がん患者における血液検査異常
アミラーゼ・エラスターゼ・CA19-9・DUPAN2・SPAN1の上昇
当院では、上記のようなリスク因子、症状・血液検査異常のある患者さんの超音波内視鏡検査(EUS)を積極的に行い、膵臓がんの早期発見に努めています。EUS を受けることができる病院は限られており、膵臓に異常を指摘された方や膵臓がんのリスクをもっている方のお役に立てると考えております。 お困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。